特許庁の審査官に出願した発明の特許性などを判断して特許を認めてもいいかどうかの審査の基準についてはわかりにくいものです。
今回はそんな特許の審査基準を説明します。
特許・実用新案審査基準は
特許の審査基準は大きくこの3点です。
特許審査基準
- 発明該当性及び産業上の利用可能性
- 新規性
- 進歩性
発明該当性は、産業上利用できるものは特許に出来きます。 証拠や先行技術文献がないものです。
【新規性】がないものは特許になりません。
特許出願前に、日本国内又は外国において、公然と実施(用いられた)された発明があれば特許となりません。
「進歩性」があり同業者(同等の知識や技術を持つ者)が容易に考え出せない発明であれば特許にできます。
審査基準
IoT関連技術コンピュータソフトウェアの発明該当性の判断基準とは、 IoT関連技術はソフトウェアを必要とする場合があります。
そのときの発明該当性の判断は、他のソフトウエアを必要とする技術と同じです。
審査基準で「発明」とは
「自然法則を利用した技術的思想の創作」は高度であることが必要です。
単なる発見は特許になりません。
例えば、核分裂の発見、X線の発見、電池の原理の発見だけでは、特許権利化は出来ませんが、原子力発電、X線装置、リチウムイオン電池、など産業上で人が使えるものは特許となります。
自然法則を満足する具体例
- 機器等に対する制御又は制御に伴う処理を具体的に行うもの(エンジン制御等)
- 対象の技術的性質に基づく情報処理を具体的に行うもの(画像処理等)
コンピュータを利用しているか否に関係なく「自然法則を利用した技術思想の創作」と認められるものは発明該当性を満たします。
コンピュータソフトウェアを利用する場合の注意点
装置、システム、コンピュータソフトウェア等を利用してした技術的思想の創作に該当するか否かを慎重に検討する必要があります。
ソフトウェアとハードウエア協働することによって、使用目的に応じた動作方法がされれば発明該当性に当てはまります。
データの発明該当性
データが情報の単なる提示に該当する場合には、「発明」に該当しません。
例えばカメラで写つされた画像などのデータ自体などは該当しません。
データのうち「構造を有するデータ」及び「データ構造」については、「プログラムに準ずるもの」に該当し発明に該当します。
プログラムの発明該当性
「プログラム」とは、電子計算機に与える指令をするもので、結果を得ることができます。
「プログラムに準ずるもの」とは、コンピュータに対する直接の指令ではないが、コンピュータの処理を規定するものという点でプログラムに類似する性質を有するので、発明の該当性があるとされます。
また、新規性の判断にはコンビネーション発明、サブコンビネーション発明とがあり、IoTはサブコンビネーションの発明として特許出願されることがあります。
サブコンビネーションとは
コンビネーションは、「2つ以上の装置を組み合せてなる全体装置の発明、2つ以上の工程を組み合わせてなる製造装置の発明」のことを言います。
対して、サブコンビネーションは「2つの装置が対になっているタイプと全体装置に対し一部品を構成している発明」のことを指します。
「ごみ貯蔵カセット回転装置」と「ごみ貯蔵カセット」の組み合わせで成立しているゴミ貯蔵機器はコンビネーション発明です。
それに対する「ごみ貯蔵カセット」はサブコンビネーション発明と捉えることができます。
プリンター装置本体に対し、搭載インクもこの関係にあたります。
IoT関連技術は、通常、複数の装置や端末がネットワークで接続されたシステムで実現されるため、当該システムの一部がサブコンビネーションの発明として特許出願されることがあります。
IoT関連技術のサブコンビネーションの発明の新規性の判断は、他のサブコンビネー ションの発明についての新規性の判断とかわりません。
IoT関連技術の発展に伴って、1つの装置のみで完結するか発明だけではなく、複数の装置同士で情報のやり取りを行うことによって成立する発明や、複数の装置とサーバとによって構成されるシステムに関する発明が増えています
このような発明では、全体(システム)の発明だけではなく、全体の発明の一部を構成するサブコンビネーション発明で特許の権利化がはかれます。
発明進歩性の審査基準
発明進歩性の審査では進歩性が否定される要素と、進歩性が肯定される要素を、総合的に評価します。
IoT関連技術等の発明においては、引用発明との相違点に関し、有利な効果が認められるケースがあります。
有利な効果が認められるケース
- 「モノ」がネットワークと接続されることで得られる情報の活用
- 特定の学習済みモデルから得られる特有の出力情報
- 特定の構造を有するデータによって規定される特有の情報処理
技術分野の関連性や課題の共通性、作用や機能の共通性、主引用発明からの単なる設計変更や技術の寄せ集めは進歩性が否定される要素となります。
まとめ
以上述べたように、IoT関連技術の特許出願をした後、特許庁の審査官による、審査内容が理解出来たと思います。
IoT関連技術は、装置システムのコンビネーションとサブコンビネーションと、適用する技術が階層化して複雑になっております。
ソフトウエアもAI(人工知能)などの発明により、技術が多岐にわたりより、複雑化して来ているので、特許庁もIoT関連技術の審査官が複数名のチームを作り、審査力を強化し、このような、審査基準をオープンにしています。
新しい技術などを開発し、特許出願時に参考にして、特許願いを作成下さい。