原油価格の高騰をはじめ、電気代や小麦や油などの価格高騰に伴い、経費が上昇している中、少しでも経費を抑えたいと新電力への乗り換えを検討している企業やお店もあるかもしれません。
新電力に乗り換えれば、電気代が下がるのか、デメリットはないのか、新電力の仕組みや特徴とともに見ていきましょう。
新電力の仕組みと特徴
新電力は電力自由化により、新たに登場した電気を小売りする業者のことです。
それまでは大手電力会社が地域独占をしていました。
企業や店舗、工場の所在地を管轄する電力会社と契約するしか電気の供給を得る方法はなかったのです。
プランは限られており、電力使用量が大きな企業などは電力会社と相対契約をしており、1社独占ゆえに自社に有利となる条件での契約は基本的に想定できません。
電力自由化で小売業者の市場参入が認められたことで、競争原理が働き、料金の低下や多彩なサービスの提供が見込まれます。
また新電力への切り替えとともに、電気代を下げるIoTビルオートメーション・システムも導入すると、さらに電気代のコスト削減が可能です。
IoTビルオートメーション・システムは、人がいないときの無駄な換気をなくすことで電気料金を大幅にカットします、手頃な値段ですぐに導入することができ、最大50%の電気代削減という高い効果が実感できるシステムです。
電力会社と新電力の違い
電力会社は大規模な発電所を持ち、電気の製造から販売、供給まで一挙に手掛ける業者です。
これに対して、新電力は基本的には電気の小売業者であり、発電所で自社発電をしていないケースも多いです。
新電力によって形態はさまざまで、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを発電して販売するケース、再生可能エネルギーを発電している発電所から購入して販売するケース、日本卸電力取引所(JEPX)から購入して販売するケース、それらをミックスしているケースなどがあります。
また、新電力は独自の送電網は有しておらず、既存の大手電力会社の送配電網を利用します。
もっとも、大手電力会社の送配電網を利用することで、大手電力会社が新電力より優位に立たないよう、既存の電力会社の発電・小売部門と送配電部門は分離されることとなりました。
この発送電分離により中立性を保ち、新電力と大手電力会社が公平かつ公正なライバルとして競争する環境が整っているのです。
なお、万が一、新電力で電力供給ができない事態が起こっても、大手電力会社がカバーする仕組みが整えられています。
新電力の仕組みや特徴がわかったところで、以下で新電力のデメリットについて見ていきましょう。
比較が面倒
これまでは施設所在地の地域を管轄する大手電力会社と契約するしか方法がありませんでした。一者択一だったわけです。
ですが、新電力の参入により、どんどん選択肢が増え、プランやサービスも多様化しています。
異業種ではありますが、ガス会社や通信会社、ガソリンスタンドなど知名度の高い大手企業も新電力として参入している一方で、無名の小さな新電力も増え続けています。
料金やプランが異なるほか、ガスとセットでお得、インターネット回線とセットでお得など、ほかの経費もあわせてお得になるプランも少なくありません。
どのプランが良いのか、資料を見比べたり、見積もりを取り寄せたり、担当者と商談を重ねたりすることが必要となります。
乗り換えるためには手間と時間がかかるのがデメリットの一つです。
より有利な新電力と出会えないおそれ
新電力に乗り換えると電気代が安くなると思われがちですが、必ずしも安くなるとは限りません。
電気代とガスやインターネットなどほかのサービスの料金とトータルで安くなるといったケースも少なくありません。
他社には有利でも、自社には合わないケース、期待していたほど下がらないケースもあります。
新電力の数もプランの数も多彩なので、あらゆるプランやサービスを調査して見比べるのには限界もあります。
見積もりを取ることやシミュレーションをしても、自社にとって最も有利となる新電力と出会えない可能性があるのもデメリットです。
すぐに切り替えられないおそれ
新電力への乗り換えを行うタイミングは、事業年度の替わり目や新たに工場や店舗を構えた時、事務所の引っ越しをする時などが多いのではないでしょうか。
新規開業や引っ越しなどを控えている時は、早めに乗り換え手続きを取らないと、使いたいタイミングで使用開始できないおそれがあります。
新電力によっても異なりますが、切り替え手続きの完了まで1週間~2ヶ月近くかかるケースもあるので注意が必要です。
たとえば、最も安い料金のAの新電力に乗り換えようと思ったところ、手続きに1ヶ月半かかると言われ、すぐに切り替えができる2番目に安かったBの新電力と契約することになるケースも想定されます。
Aの新電力とBの新電力の月の料金差が3,000円だったとして、1年では36,000円もの経費アップになるので、特定のタイミングで乗り換えたいなら、検討は早めに行うことが大切です。
乗り換え時に違約金が発生するおそれ
とりあえず、Bの新電力と契約しておき、その間に一番安いAの新電力への切り替え手続きを進めれば良いのではと思われるかもしれません。
ですが、新電力によっては数年契約が前提となり、早期に解約すると違約金が請求されるケースもあるので注意が必要です。
仮に違約金が取られなくても、短期間で手続きを繰り返すのは手間もかかり面倒です。
市場連動型プランのリスク
日本卸電力取引所(JEPX)から電力の調達を行っている新電力や市場連動型プランの場合には注意が必要になります。
大手電力会社で以前から提供されてきた従量電灯型の場合は、電気料金の単価が決まっていますが、市場連動型は単価が市場価格と連動して随時変動するためです。
天然ガスや石油価格などが高騰して電力の市場単価も上昇した場合、市場連動型プランでは、事前のシミュレーションからは想定できない料金の高騰が起こるおそれがあります。
また、電気料金の単価が市場と連動しない単価固定プランを選んでいる場合でも、その新電力がJEPXから電力調達を行っている場合には、新電力が価格高騰のあおりを受けてしまいます。
価格高騰を自社では吸収しきれずに、契約途中での価格変更の申し出を受けるおそれがあるのもデメリットです。
中には、価格高騰を契約者に転嫁するのも難しいまま、事業からの撤退を決める場合や倒産するケースもあるので注意しなくてはなりません。
撤退や倒産により、新たに電力会社を探す必要が生じます。
新電力を選ぶ際には、電力調達における市場価格高騰リスクを理解し、JEPXだけでなく、多彩な調達ルートを構築している新電力のほうが、リスク分散ができるので安心です。
大規模なソーラー発電所や風力発電所、大規模発電所を有する電力会社やほかの新電力、商社などから調達を行っているかもチェックしましょう。
撤退や倒産のリスク
電力自由化はまだ始まったばかりですが、すでに事業から撤退していることや倒産して電力供給ができなくなっている新電力も登場している点はユーザーにとってリスクです。
電力自由化の波に押されて参入したものの、思うようにユーザーを獲得できず、事業の維持が難しくなっているケースも発生しています。
石油価格の高騰など世界経済や政治情勢などの影響を受け、JEPXの市場価格が高騰したことで、格安プランの提供が難しくなり、撤退を決めた新電力もあります。
想定した電気代のシミュレーションが崩れるわけですから、再び新電力の選び直しやキャッシュフローのシミュレーションが必要になります。
まとめ
新電力の仕組みや特徴とともにデメリットをご紹介してきました。
新電力というと電気代が安くなってお得なイメージがありますが、デメリットもあるので、事前によく比較検討し、それぞれのリスクも理解したうえで乗り換えることが大切です。